まあ何時ものことなのですが。



「んぎぃやぁぁぁぁぁ!!!!!」


今日もデーデマン邸では絶えることのない断末魔が響きわたっているのであります。
あまりにも日常すぎて、当然誰も気にはしないのですが…。
「……またか」ただ、最近の屋敷の爆破っぷりは尋常じゃありません。
今日も今日とて最強執事ことロード セバスチャンは重い腰を上げて原因を消去すべく音源へと歩み寄ります。
どうせ少女型異次元生物(仮)か、グータラ主人がアホな事をしでかしているだけ……。
セバスチャンは確実に貯まっていくストレスにも負けず、書斎のドアを蹴破る。因みに既に両手にエモノを装備済み。
ちなみに本日のエモノは銃(※麻酔銃かどうかはこの時点では不明)蹴破ったドアの残骸が何かを潰しているらしき感触があるが、ただひたすら無視。
おそらくAであろう。
分かってるけど無視。


「旦那様…」


背後にやや黒い陰を背負ったセバスチャンはデーデマンに向かって麻酔銃を向ける。
その様たるや美しくも恐ろしく、セバスチャンに人生を賭けた愛を注ぐ面々はほんの一瞬動きを止めた。
しかしそれはこの屋敷に住まう者はそれが命取りになると言うことも知っている。


「ふふふふっ…。来たね、セバスチャン!!!」


まぁコレもセバスチャンの仕事の内ですから…。
放っておけば半日もしないうちに屋敷は崩壊。
跡地から大巣穴帝国が築かれるであろう……なんとも想像出来てしまう辺りが悲しい。
使用人一同は瞳に涙を浮かべつつ、散乱した部屋の中心に向かうセバスチャンに一縷の望みをかけた。


「一昨日から朝・昼・晩・・・・・今日までよくもあきもせずに破壊活動を続けられたものですね。
いい加減にしないとスマキにしてから『献上』の熨斗をつけて向かいの家に放り込みますよ」



いそいそと身の保身に掛かった使用人(A除く)はその悪魔のような言葉に縮み上がりながらも、冷静に己を保つべくゆっくりとその場から離れた。


「そんなこと・・・・・想像しただけで・・・・・っぅう・・・・・・・!!!」


「泣いてる場合じゃないぞ、B君。早く逃げとかないと巻き込まれるからな」


約一名どうしても冷静で居られない者も居るようだが、そこはやはり癒し系コックがフォロー。
しかしその間にも絶対零度の微笑は絶えず、口からは毒を吐きつづけるセバスチャンの勢いが止まる事はない。
冒頭の通り、さして普段とは変わらない・・・・・が。


「ふっふ〜ん。いいもんねー、仕事しないんだから〜」


あえて言うならデーデマンがめずらしくもセバスチャンにおされていないことくらいだろうか。
デーデマンは編み籠の中に爆弾を仕込み、あたりに振りまきまくっている。


「ほほう・・・・・」


セバスチャンのブチキレゲージがぐいぐい上がっていくが分かる。
ああ・・・・頼むからそれ以上言ってくれるな・・・・・と、誰もがそう思ったその瞬間。


「ちぇえすとーーーーーーーーーー!!!!!!!!」


ばぎゅぐぼべばっ・・・・・と正直な話耳にしたくないレベルのグロテスクな効果音と共に、セバスチャンの背後の壁からヘイヂが飛び出し襲い掛かった。
ガラガラと音を立てて崩れた壁の向こうでは通行人がこちらをみて硬直している。



「チッ・・・・」


風圧でとてつもないことになっているヘイヂの顔面に、振り向き様の抜刀で一撃を喰らわせたセバスチャンはそのままの勢いでデーデマンを捕獲にかかる。
鋭い眼光で睨みつけられたデーデマンが一瞬怯み、背中を見せたのを機としてセバスチャンは銃を構えた。(しつこいようだがこの次点で麻酔銃かどうかは不明である)



さーせーるーかああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!


ヘイヂ復活。
コンマ5秒以下で再生、復活したヘイヂは親友デーデマンを救うべく皮分裂で攻撃。


「失せろ地球外生物!!!」


「はははははっ、その程度じゃオレは倒せねえぜーーー!!!」


「っの・・・・・・・!!」


バァン バァン バァンッ



響く銃声。
そして壁にめり込んだ・・・・・・・。



「「「・・・・・・・・・・・」」」




鈍色に光る実弾が、その場の時を止めた。
彼らはゆっくりと首をセバスチャンの方向へと向けると、彼は眉根に皺を寄せ腹の底から湧き出たかのようなおどろおどろしい声で言った。






「・・・・・・大人しくくたばっていればいい物を・・・・・・・」







そしてセバスチャンはカツカツと靴を鳴らして逃げたデーデマンを捕獲するために部屋を出た。





「たすけ・・・・・・・・ぐはっ・・・・・・」




忘れ去られていたA君、合掌。
















+ + + + + + + +









さて、こちら変わってデーデマンはといいますと・・・・・・。



「ふぅ〜、なんとかまいたかな」


安心しきった表情で来た間の廊下を歩むデーデマンは一休み、と壁に背を預けて座り込んだ。
直撃は免れたとはいえセバスチャンはその存在そのものが武器である。
目で人が殺せる・・・とはあながち間違いでもない。
デーデマンとセバスチャンの付き合いは二桁単位、さすがに慣れというものがくるかとも思ったが怖い。
すんっごく怖い。



「にしても今日は一段と殺気だってたな〜」


ハハハハ、と笑いながら対先ほどまでのセバスチャンの姿を反芻する。



「君がめずらしくセバスチャンのお色気攻撃かわして暴れてるから余計にキレてるんじゃない?」


「ああ、な〜るほど!」


ポン、と手を打つデーデマン。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?



















「ユーゼフ」


「ん、何かな?」


ちんまりと縮みに縮みきったデーデマンの隣には、天使のような微笑を浮かべたユーゼフ。
Bがこの場に居たのならオリンピック選手も真っ青の超速で屋敷を疾走したことだろう。
笑顔とは裏腹に背負った空気はこの上なく暗い、暗黒色だ。


「・・・・・・・毎度のことだけどさ、君どっから沸いて出てくるの?」


「いやだなぁ。まるで人をボウフラかゴキ●リみたいに言わないでくれないかい」


そちらの方が幾分マシだ・・・・と心の中でツッコミを入れたデーデマンはあっさりと自分からフッた話題を闇に葬った。


「てか、お色気攻撃って・・・・セバスチャンに言ったら殺されるって・・・・・」


「どうせ本人だって確信犯なんだから気にしない気にしない。で、今回は何なのさ」


「何なのさって・・・・ねぇ?」



語尾を濁すデーデマンは新しいおもちゃを得た子供のように無邪気に笑い、その一瞬後にはへにゃっ・・・と顔をだらしなく緩めた。
おやおや、とそれを見るユーゼフも心なしか楽しそうだ。
ニコニコ、というよりは寧ろ『ニヤニヤ』笑いの二人は段々と近づいてくる大きな音に気付き立ち上がった。



「ねえ、ユーゼフ」


「なんだい?」





「捕まえられるもんならやってみやがれーーーーー!!!!」


ダダダダダダダダッ


「言われなくてもそのつもりだっ・・・・・!」






「ちょっと手伝ってくれないかな、多分面白いことになるよ・・・・」


「面白い、ねえ。あとから来るセバスチャンの報復が怖いんだけど」


「で、するの?しないの?」




ダガッダダダダダダダダッ・・・・・・・・・



「いい加減に縛につけ!!」


「はははははははっ」











「そりゃあもう・・・・・・・・・」










どがんっ!!!!!



急スピードにもかかわらず、見事コーナーを曲がったヘイヂとセバスチャンは待ち構えていたユーゼフとデーデマンと衝突しかかる。
まるでスローモーションのように、やけにゆっくりに感じられたその瞬間。

ニヤリ、と不敵に歪んだユーゼフはデーデマンから手渡された小さな瓶の中身をすれ違い様・・・・・・・思い切りセバスチャンにむかってぶちまけた。








「もちろん手伝うとも」






バシャッ・・・・・・




バフンッ!!!!!!!!!!!







液体が瓶から零れ、セバスチャンに触れた瞬間爆音と共に小規模の爆煙が立ち昇る。
デーデマンとヘイヂはその勢いで数メートル吹き飛んだが、ほぼ無傷である。
そしてなぜか風上で平然とした顔で立っているユーゼフは鼻歌でも歌いかねないほど上機嫌であった。
割れた窓を踏みつけ、爆煙の中心にいるセバスチャンに近づく。






「さて、どうなることやら♪」















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