聞こえない振りして



「君のために伸ばしたんですよ」

僕自身が手に取った髪を撫でて、唇に押し当てる。
彼の視線がそれに絡んだことが空気でわかって、無意識に笑みが浮かんだ。

「繋がってたかったんです、君と、ずっと」

いつかこれが、君と僕を繋ぐアカい糸になればいいと思った。
いつかこれが、君と僕を染める糸であればいいと思った。
体に残された感覚は、とっくの昔に思い出になってしまっていて、僕の中には妄想めいた希望しかなくなっていた。
否、妄想だと君は言うのでしょう。

そんな僕の思考を読んだかのように口を開いた彼の言葉は、聞こえない振りして。

僕はただ、僕の信じる君を、あいしていたいだけなのです。