ポワソン・ダヴリル



「曰く、四月の魚の寿命はとても短いのだそうです」

誰、曰くだよ。
小さく突っ込みを入れて俺は嘆息する。
骸はひどく上機嫌だが、こちらとしてはそんな顔を至近距離に寄せられていて不機嫌も真っ只中だ。

「ポワソン・ダヴリル、ってイタリア語、じゃ、ないだろ。お前、日本にいながらにして何でそっちの言葉に訳すわけ?」

「だって、なんだか響きがかわいらしいじゃありませんか」

ぼくみたいに、なんて気色悪く言ってつけた骸の横っ面を、俺は遠慮なく平手で打った。
ぱしっしーん、口で擬音化したくらいにしっかしと、乾いたオトが響く。
けれど骸にとっては、こんな暴力的スキンシップを交わすことすら嬉しいらしい。

「つなよしくん」

「何」

「僕のこと、どう思ってますか?」

それにしてもこの男、ノリノリである。
妙に子供っぽいけれど、まぁ、一年に一度だし、ノってやるとしよう。

「大好きだよ」

一瞬の空白、四月一日の、言葉。

「世界の誰よりもお前を愛してる、可能なら今すぐにでも結婚したいくらいに愛してる」

世間一般で言うところのエイプリルフール、嘘をついてもいい日。
正確に言うなら四月一日の午前中、は嘘をついてもいい…だったか。
時計は十一時五十分を指している、セーフ!

エイプリルフールだっていうのに、俺のこんな言葉に何を期待してるんだか。

「それ、ほんと、です、よ、ね!」

俺は頷いた、て、お前からエイプリルフールネタ振ってきたくせにその反応は何だ。

ふる、と骸の瞳が震えた。
え、と思ったが瞬間に骸の表情は変わった。

満面の笑みでもって、大声で、年甲斐もなく叫んだ!


「その言質、たしかに取りましたからねっ!!!」


よく見てみると、ヤツの右手にはICレコーダーが握られている。

「おい、今日は四月一日。エイプリルフール…」

「おやおやおやおや、つなよしくん!知らなかったんですか、二千八年の四月一日、今日という日はエイプリルフール創設百周年!それに際して今日は嘘をつくことが世界的に禁止されているんですよ。知らなかったんですか、ソレはしかたない、けれど今日という日はエイプリルフールにしてエイプリルフールにしてあらず!四月の魚は生まれてすらいなかった、つまりつまり、これがどういうことだか分かりますか?」

とりあえず、いまあと数ミリ動いたらこいつの唇と俺の唇が衝突しそうだということは分かった。
そろり、腰を引きかけた瞬間に悪夢は訪れる。


「責任とって、ちゃんと僕をおよめにもらってくださいね」


ちゅ。


…なんて、かわいらしいレベルのものではなかったのは、確か。
今だけ、イスラム教徒になりたいと、俺は強く思った。

俺がそのあとどうなったのかは、また、別の話である。








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と、いうわけで今日は嘘をついちゃだめな四月一日ですよ。
企画ちゃった皆さんはご存知でしたでしょうか?
ポワソン・ダヴリル、はフランス語の四月馬鹿です。





↑って言うのはうそです\(^o^)/
もっともらしい嘘であって真実ではないです、これこそが四月馬鹿ネタですのであしからず。