後悔しても遅いんじゃないですか

最近とても、頭が重い。
さらに自分を見つめる彼の目が今すぐにでも泣き出してしまいそうなので、さらに気分まで重い。
こんなときに慰めの言葉をかけてやれないこの体が呪わしかった。
けれど手を伸ばして、もう溢れる直前になっている目のふちを撫ぜることくらいはできる。
できるだけ、なるべく、笑顔で。
ああ、こういった表情を自覚するのも思えば彼が初めてだった。
観用人形にも感情があるのかとお疑いですか。
それもまぁ、無理はないでしょう。
けれど、確かに。
ただ慈しみ、愛しみ、その時を共有する文字道理人形の僕らにだって感情や教示くらいは、存在しているんですよ。
僕たちは本当に、こころから、自らが選んだ人間に対してしか心を開きませんからね。
知らないのも、詮無きことでしょう。
けれどね、その主にすらこの思いが伝わらないのは、ひどくもどかしいものです。
僕の頭のてっぺんの、小さかったつぼみは、今やぐらぐらと揺れて、頭痛を伴うくらいに成長しています。
とても、言葉にできないほどうつくしい、冠ができるのだと。
そしてそれを、他でもない主が望んでいるのなら、僕はそれを美しく、美しく、彼が忘れることのできないほどの凄絶さでもって、花を咲かせることに全てをささげるのです。
僕達はそれを悲しいとか、苦しいだとか、そんな風に思ったりしません。
それが痛みを伴うものであれ、それが主の喜びとなるのならこの身すらささげましょう。
それくらいの覚悟がなくっちゃぁ、つぼみを育てるなんて、無理ですからね。
僕の冠は一体どんな色をしているのでしょうか、どんな形をしているのでしょうか。
あなたに喜んでほしくて、がんばっているのにね。

どうして、あなたは泣くんですか。
その両目で、しっかりと見ていてほしいのに。
ぬるい水で、さぞかし視界がふやふやになっていることでしょうね。
お願いだから、この花の咲くときは、しっかりと僕をみていてくださいね。
今更自分のしてきたことを嘆いたって無駄ですよ。
そのときにはもう、後悔しても遅いんじゃないですか。
あなたが僕に名前をくれたあの日から、こうなることは決まっていたのだから。

骸、だなんて。
これ以上ないくらいの似合いの名前ですよ。。
精々僕を選んだことを後悔してください、無駄ですから。

もう少し、もう少しだけ。
ぼくを、あいして。