誰が為に







故郷から喚ぶ同胞は、ただ、自らと同じく主のためだけに。
光も、闇も、ただただ、主のためだけに。

着物の裾の翻るその向こうには、すぐ敵が迫っている。
振りかざした拳をわずかにそらせて、上体ごと右へずらす。
一瞬後には背後から一撃が振ってきて、それを勢いに任せてかわした。
ずらした体の勢いをそのままに、左足を軸に懇親の蹴りを見舞う。
くぐもった呻き声とともに地に伏した相手に、とどめとばかりもう一発。
図体ばかりでかい男だと、いっそ鼻で哂おうか。


(例え誰だろうと、触れさせるものか)


身を挺して護るのは、ただひとりの主のみ。
誰が為に戦うのかと、問われたならば。

それはためらいもなく、告げる名前。


「フェア、大事ないか」


呆然としている彼女の手を引いて、そそくさとその場から立ち去った。
どうせ五分も過ぎたなら『やりすぎ!』と叱咤の声が飛んでくるのだから、家路を辿るのは早ければ早いほどよいだろう。


(本当は、怒られる謂れなどないのだぞ)


召喚石に縛られずとも、ただ意思のとおりにまっとうするのみ。
いとしの主を護るため、護衛獣は今日もゆくのだ。











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IF セイロン護衛獣ED
〜フェアに声を掛けてくる男は容赦なく撃退〜