小さな彼女は、今日も子供らしく元気に街を駆けていく。
それはもう、眩しすぎるくらいの無邪気さには溜息すら出るほどだ。

嫌味なくらいの晴れ空に、申し訳程度の雲が太陽を一瞬だけ隠す。
活気に満ちた市場の通りを、陰る道々を、歩く。
俺は気づかれないように、そっと、後ろを、ついて歩くのだ。
くるくると踊るように服の裾を翻し、両手に抱えきれないほどの荷物を落とさないように歩く彼女の後ろを、歩く。
まだ陰りは消えない。
力を入れたら折れてしまいそうな、細い腕が茶色の紙袋を必死に抱きとめている。
バランスが崩れたら、一旦顎で抑えなおして、持ち直す。
ほんの一瞬だけ、後ろから見える白いうなじに、ごくりと唾を嚥下した。
まだ肌寒い風が吹くのに、じわりと滲む汗は何なのだろう。


ごろ、り。

水を含んだ唇のように、未熟な赤色の林檎が足元に転がった。
それを手に取り、見やる。
ぼやけていた焦点が、視界が、明るくなる。
彼女が、振り向く。
向けられた、あまりにも純粋な笑顔。

「お兄ちゃん!」

白い頬が、僅かに上気していた。
風が髪を撫ぜて、浚っていった。

(ああ、)

駆け寄ってくる彼女が

(オレのものになればいいのに)



















例えば、オレのものになってくれと
言えたなら何かが違っていたのか

そんなはずもない

口にしようとしまいと、この恋は叶わない
ああ、分かってる

















オレは生まれたときから、失恋してるんだから!