こどものねがい
| 「ママを泣かせるなら、嫌いよ」 本当は嘘、嫌いになんてなれない。 「はい」 ……そんな風に苦笑して、一歩引くところは、嫌いじゃないけど、好きじゃない。 困ったような顔して、なら泣かせないようにしようって、なんで思わないの? 「ママを泣かせるセイロンなんて、だいっきらい!」 大好きなママ、私の大好きな優しいママ。 とても強いけれど、もろいところがあるのを私は知ってる。 セイロンだって知ってるはずなのに、このひとは、どうもしない。 私とおんなじように、いつもママを目で追ってるのに、なにもしないの。 それって、とってもずるい! なにもしないのに、なのもしてなくても、ママがセイロンばっかりかまうから。 セイロンが来てからママが絵本を読んでくれる回数が減った。 セイロンが来てからママとお話する回数が減った。 ママを独占する時間が減って、なのにセイロンがママを泣かせるから! 「きらい、きらい!ママを取っちゃうセイロンなんて、いらない!」 うそだよ、ほんとはね。 でも止まらないの。 「御子様…」 嫌えるわけない。 だってセイロンは、ママの好きなひとだから。 セイロンがどんなにママを泣かせても、ママがセイロンを好きでいるから。 だから私は、セイロンを嫌いになれないんだ。 ねぇ、ママ。 私、ママには幸せでいて欲しいの。 「セイロン、の、ばかっ!」 私なんかまもらなくったっていい。 ママが私を護ってくれるもの。 だから、セイロンはママを護ってくれればいいの。 好きなひとの幸せをねがうのは、いけないことですか? ねぇ、ママ。なかないで。 |