嗚
          な
             ん
                テ 






「なぁに、時の流れるのなどあっという間だよ」


そう、龍人たる己にとっては瞬きをするにも等しい時間だ。
ぱちり、ぱちり。
扇を開いては閉じる。
彼女は何かを言いた気に唇をわななかせて、けれどその言葉を吐き出すのを止めた。
それとも、言えなかったのか。


「そなたが大人になったら必ず迎えに来ると、誓約しよう」


その手をとって、そっと甲に口付ける。
それを彼女は怯えたようにそれを振り払う。

置いていくわけではない、一人にするわけではない。
悲しませたいわけでも、なく。
けれど彼女は今、その瞳に大粒の涙をためて。


「大人になったらって、何年後の話なのよ!!今じゃ、今じゃだめなの…?」


こぶしを握って、俯くようにして叫ぶときは何かを我慢しているとき。
知ったのはいつだったろうか。
仕草、表情、その一つ一つを慈しみ、愛しみ。
その手を、離せずにいた。


「ここは、居心地が良すぎて我の本来の目的を忘れてしまいそうなのだよ」


彼女はとても優しくて、まっすぐだから。
こういってしまえば、もう何も返せないと分かっていて。


「だからフェア、しばしのお別れだ」


彼女は泣いた。
だから我は笑う。


泣くほど我が好きならば、早く大人におなり。
迎えが待てぬというのなら、追いかけておいで。


泣き顔すらも、愛しいと。
ならばどこぞの世界の御伽の龍のように、さらって頭からぺろりと食べてしまうのもいいだろうか。







嗚呼、なんて
なんて、酷い男なのだろう