最後に会ったのは、最初に会ったときと同じ季節。
遅い奥州の春の、桜舞う中で。
杯を傾けながら下らないことばかりを話していたことぐらいしか記憶にない。
些細なことだとオマエが笑った。
そんなこと、どうでもいいじゃないかと諭すような声に反発したのはつい昨日のように思えた。
酒も回っていたのだろう、らしくもなくムキになったのを覚えている。

「じゃぁ賭けでもするか」

「What?なんだって、聞こえねぇよ」

「そう管まくなって、政宗」

「っるせーな、男としての矜持の問題だ」

横に並んだときの目線の違い、そんなものは些細なことだと、言う。
まだ十代なんだし、これから伸びるだろなんて、適当に言われても。
持たざるものの気持ちが分からないのだ、と憤慨しても風のように流されてそれでおしまい。
毎度毎度の応酬で、お互い意見を曲げないものだから始末におえないのだ。


「次に」

慶次が傾けた杯を一気に煽った。
桜の花びらが一枚、沈む。

「次にあったときに、アンタが俺の身長越してたら・・・・・・」


薫風にかき消された、音はなんだったのか。






あれから幾年。
戦乱の時代を平定するまで、お互いうわさを聞くことはあっても会うことは一度たりともなかった。
目に焼きついた姿はあの日のまま変わらない。

「はぁー、相変わらず奥州の春はまだ寒いねぇ」

風に揺られる栗毛は尾を引いて、まっすぐに進んでいく。
あの日と変わらず、美しい絢爛の春だ。
それを楽しむように眺めていた慶次の足が、ふと止まった。

「Hey,久しぶりじゃねぇか」

「政、宗・・・・・・?」

「賭けは、俺の勝ちだぜ。慶次」


同じ春に、同じように二人で並んで。
けれど、目線の違う世界はあの日と同じだっただろうか?