「俺さ、軍なんて大嫌いだけど、あんたが大総統になるなら軍人になるものいいかなって思ったんだ」










ロイの姿を見るなり、エドはそういって笑った。

反則だと思った。
こちらの言いたい事を分かっているくせに、それを言わせないようにする、言葉。

ロイは渋面を作って一言だけ言った。







「他に私に言うべき事があるんじゃないのか?」






ロイにしては珍しく、表も裏も無い言葉。










ずっと、昔から見守ってきた。
最初は誰かを守ることで優越感に浸っていた。
人殺しの自分でも、そうすることで誰かに許してもらえるような気がしていたから。

初めてあったあの日、虚ろな瞳でこの世のどん底に落ちたような目で、見つめて。
心が痛むほどに、揺さぶられた。





思えば、あのときから既に気付いていたのかもしれない。
自分の中で渦巻く形容しがたい、この感情に。




















「オレに勝てたら全部話すよ」















瞬間、練兵場に光が漏れた。
緩やかな大気が辺りを震わせ、風を孕んだ。
肩に流した金糸の髪が揺れてキラキラと光る。


髪が、伸びたか。
心の端で思ったこと。
離れていた三年間という月日。
それは、人が変わるには十分な時間だった。














「君が私に勝てたことが一度だってあったかな?」














変わったさ。
取り巻く環境、容姿、思想、そんなの当然のことじゃないか。
それでも変わらない、思い。



最初からそうしていればよかった。
欲しい物は何時だって自分のもとにあった。

手に入れるための手段は、厭わなかった。