一ヶ月前に親父は死んで

   my father died a month ago 


財産みんな残してくれた、

   And left me all his richews;



羽布団一枚に、義足が一本

   A feather bed, and a wooded leg,


それから革の半ズボン

   And a pair of leather breeches,



クチの欠けたティーポットが一個

   He left me a teapot without a spout,


とっての取れたカップが一個

   A cup without a handle,


蓋のなくなった煙草入れがひとつに

   A tubacco box without a lid,


タダも同じの蝋燭一本。

   And half a farthing candle.









薄い本をパタリと閉じて、噛み締めた唇から滲む血を袖で拭った。
心の底がもやもやして仕方ない。

あんな奴、死んだってかまいやしなかったのに。
あんなにも憎んでいた父親という存在が、この世から消えて『嬉しい』と思えたはずなのに。
自分で燃やした家の私物以外にあいつが残したもの





A feather bed, and a wooded leg,



And a pair of leather breeches,



He left me a teapot without a spout,



A cup without a handle,



A tubacco box without a lid,



And half a farthing candle.














何も要らなかったのに












真実さえもはや望みはしなかった











心が望んだのは、一ヶ月も前に死んだ人間のぬくもりだった













もう二度と手に入れることの出来ないぬくもりだった