それはほんの気まぐれだった。


男だらけのむさ苦しい軍の中で特別に浮き立った存在の少年が、普段の少し影を背負った瞳を閉じて自分の目の前ですやすやと眠っていた。


常に傷ついた獣のような反応をおこす少年が、大人しく目の前で眠っていたのが珍しかっただけだった。






触れたいと思ったのはほんの気まぐれ





大きく上下する胸をそっと押さえつけて、少しかカサついた唇に口付けた。








「バレたら消し炭にされそうだな・・・・・・・・・・」







そう、本当に気まぐれなんだからと自分に言い聞かせて、足早にその場から去る。
このままここにいて自分の上司と鉢合わせて目の前でイチャイチャされるのもイヤだったし。


人のものだと分かっているのに手を出すほど飢えちゃいないし、相手が相手なだけに最初から望みなんてなかった。
なにしろ有能で顔も良くて女にはモテるし、おまけに収入もモノスゴクよろしい。

敵わないと分かっているのに欲しいと思うなんて馬鹿げてる





「気まぐれ・・・・・・・・気まぐれ・・・・・・・」





呪文のように呟いて、さっき執務室で眠る少年にした事を頭の中から消去する。







でも、心の何処かでそれが無理だという事も分かっていた。