晴れ渡る空と鳥の泣く声。
森の木々が大地に影を落とし、ざわざわと揺れた。
ゆっくりと馬を歩ませながらその風景を見て、どうしようもなく切なくなった。
貴方と歩んだこの世界はあんなにも美しかったのに、今の世界は雨の日の夜のように混沌としておちつかない。
『陛下』
『陛下って呼ぶな、名付け親』
もう半ば挨拶と化したようにそう呼んで、わざと訂正させるのは少しでも長く声を聞いていたかったから。
少しむくれたように、言って。
『例えオレがどんな存在だって、コンラッドはオレの名づけ親なんだからな』
『・・・・・・・・はい』
嬉しかった、でも悲しかった。
こんなにも愛しくて、ずっと傍に居て守ると約束したくせに離れていく自分。
信じてくれ、なんて言えなかった。
どうしようもない自分。
その時が近づく程、名を呼んだ。
今このときを忘れないように。
離れた後に、自分のした罪を忘れないように。
「ユーリ・・・・・・・」
もうあの頃には戻れないけれど、オレはただその名を呼んだ。
覚えうる限りの、全てでもって。
相対する敵の、なによりも愛しい人の名を呼んだ。