「夜神く「あー、ハイハイ。今度は何が大変なんだ?また糖分切れか?」
お決まりのこのパターン。いい加減飽きてくれないのか、竜崎のワガママは今日も絶好調だ。
そこで・・・やられる前にやれ、これが最近の月の目標である。
それもこれも無駄に良い知能を駆使して阿呆なマネをしてくる竜崎が悪い、とは月の談だが本人にとっては生命活動に関わる問題であった。
『糖分ないと死にますよ!!』
『死ねっ!!!』
半ば本音で竜崎の胸倉をひっつかみながら、月は毎度毎度咽をいためるほどに大声でツッコミをいれた。
・・・・・ああ、今日ものどかだなあと某M氏がお茶を啜る中だだっこ竜崎とおもちゃと化した月の抗争は続く。
「竜崎と月君は仲がいいねぇ」
「ははははは。松田さん・・・・冗談もたいがいにしないと明日の日の目を見れなくなりますよ?」
GO,GO、月!!!
なんか最近目が凶悪だぞv
某M氏(特にこの表記に意味はない)がすっかり青ざめてしまったではないか。
性懲りもなく月にちょっかいをかけてくる竜崎がウザくてストレス溜まっているのは分かるがやつあたりは良くない。
「・・・・松田さん、死にたくなかったらお使いに行くことを推奨します」
「はい・・・・でもそれもなんだか無性にイヤです・・・・・」
超特大級のため息をつきながら、竜崎のお使いメモを握った某M氏は部屋から出て行った。
サヨナラ某M氏、君の出番はコレで終わったに等しいぞ。
「さて、邪魔者がいなくなったところで・・・・・・」
さりげなく失礼なことを言いつつ、竜崎がすくっと立ち上がった。
しっかりと無視を決め込んだ月はソファで雑誌を読んでいる。
内容を目で追いつつも、頭の中は『どうせこの後も竜崎のワガママに振り回されるんだ・・・』と先を読みすぎて疲れきっていた。
「糖分補給にキスひとつ・・・・」
「誰がするかーーーーーー!!!!!」
バシイッン・・・と薄い雑誌の癖にやけに強烈な音を立てて竜崎の頭にヒットした。
「痛いです・・・・」
「痛いようにしてるんだから当たり前だ!!!」
「私は今切実に糖分を欲しているんですが・・・・・・」
ちなみに例のごとく糖分源は全て竜崎の胃の中に収まっている。
もうブラックホール並だ、おそろしいことに。
再三糖尿病になるから控えろと言っても聞きやしないんだ、全く。
人が心配してやればコレだ。
人を子馬鹿にしたような態度がムカツクったらない。
「じゃあ直に砂糖でも摂取してろ!!!!!」
イヤ、それはちょっと視覚的に・・・・どうかと。
「のど乾くんですよ、アレ」
・・・・・ってやったのかよ!!!
どんな言葉をかけてもさらりとかわす竜崎に、いいかげん堪忍袋の緒も切れ気味な月は拳を震わせて黙りこんでいる。
脈も速く、背中に嫌な汗をかいているがここでキレたら負けだ。
そんな様子を見た竜崎も流石にからかいすぎたかと内心反省していた。
鬼の形相で黒いオーラを発している相手に、これ以上の刺激はよろしくない。
この場合の対応の基本は冬眠から覚めた直後の熊に接するように・・・・・だ。
「分かりました、妥協します」
そして何処からともなく二リットルペットボトルを取り出し、机にドンッと大きな音を立てて置いた。
「烏龍茶に砂糖で我慢しましょう」
「っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!」
どの辺りが妥協なのだろうか・・・・・と突っ込みで場の雰囲気を緩和させるはずの松田氏はいない。
まあ竜崎の考えとしては、月の言ったとおりに『直に砂糖摂取』を基盤に自分の『のどが渇く』に対して策を考えた故の発言であったのだが。
なら適当に砂糖水でも飲んどけよ・・・・・とはいえない。
「あ、月君も飲んでみません?否定するばかりでは物事を解決することも出来ませんし・・・・・」
プチッ・・・・・なにかが月の中ではじけた。
「勝手にやってろ、この馬鹿がぁああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
もう糖尿病の心配なんぞしてやるものか。
勝手にマヌケな死に様を晒すがいいさ!!!
・・・・・・月は心の中で毒づいた。
「・・・・・・・おいしいんですけどね」
もう個人の嗜好には口の出しようも無い。
〜完〜