後悔、という概念が今の自分に存在するのなら、きっと今此処に自分は存在しないだろう。
罪を悔いる念など、もはやとうの昔に消えうせた。

まるで息をするように、肺に酸素を取り込む生きるために必要で、日常的な動作。
それが人を殺すという大罪であると誰が言える?
ただ、無駄に芯の入ったシャープペンシルを握ってノートに文字を綴るだけ。
それだけの行為は罰せられるものなのか。

答えは、否。

人々は叫ぶ。
ブラウン管の向こう側で、薄っぺらい紙の上で、会話の中で。
人を殺すことは許されざる大罪だと口々に叫ぶ。
塗り固められた嘘。
本当は、そんなこと思っていないくせに。
自分より格下の存在を確認して安心しているくせに。

お前達はそうやって、自分の存在を脅かすものを遠ざけたいだけじゃないか。
殺しが罪であるというならば、政府はナゼ罪人に死刑を下す?
殺しはいけない事なのだろう?
ダメだダメだと言いながら、一体何人殺してきた?


ウソツキ。


世界は嘘で塗り固められて、いつか本当の姿を無くしてしまう。
そう、これは世界のために。



「いや、それは違う。結局お前のためだろう?」



同意を促す言葉も、関係ない。
そういえるただ一人の死神に、歪んだ笑顔を作って答えた。




「人の行う行為に自分の益を見出そうとしない人間なんて存在しない」




それは遠まわしな肯定の言葉。
自分のために、消していく。
自分の欲を満たすためにのみ、殺す。

否定の言葉も無い、ただ決定的な肯定も無かったけれど。





ノートに字を綴る。
ただそれだけの行為を狂ったように続ける人間を、死神はただ見つづけていた。











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