「世界は僕達に優しくないね」




抜けるような空。
澄んだ瞳で見つめる先には目に痛いほどの太陽があった。




昼間の青、何処までも澄んでいて美しい青。






「どういう意味ですか?」





聞き返せば、無邪気に笑う。
目元が少し緩んで、表情が少しだけ幼くなった。





「そのままの意味だよ」





そんな風に笑う姿は綺麗だったけど、感じた違和感はどうしても拭いきれなかった。
自分が知っているのは、少しだけ口の端を吊り上げた形だけの笑み。
乾いた笑い声は不快だと感じていたのに、なぜだかそれが懐かしい。
もう戻ってこないと、心の何処かで感じているからだろうか。
自身を嘲るような、何処か自虐的な笑みはもうない。






「キラは消えたけど、犯罪者は消えない」





「・・・・・・そうですね」






言葉全てが真っ直ぐで、強い意志もそのままに彼は此処に存在している。
少し前とは違う。
どこがどう違うと、言葉に出して言える訳でもないけれど彼は変わった。





「だから世界は僕等に優しくないんだよ」




「・・・・・・・」





他愛もない会話。
特別のないこの日常に、憎しみすら覚えた。


知らない、こんな彼は知らない。



子供のように嘘のない言葉。
打算もなしに、近づいてくる貴方。





「優しくないどころか・・・・・・いっそ残酷だ」




「?何か言った?」






天上の青、血のように赤い夕焼けの下で佇む貴方はもう居ない。






「―――――――帰ろう、竜崎」






「・・・・・・ええ」








晴れ渡る空は、いっそ愛しいほどに残酷で――――――――――。













サ ヨ ナ ラ












あの日の彼に別れを告げた。