トコトコトコトコ




そんなかんじの擬音を出しつつ、ちまっこいのが部屋をうろつき回る。
それを目の端に捕らえながら月はソファに座って本を読んでいた。
分厚いミステリ本はまあそこそこに面白く、百点満点中七十五点といったところか。
感想までしっかり読んだ所でパタリと本を閉じた。

・・・・・そして机に積んである本をまた一冊手に取った。













「って、何順応してるんですか月くーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!!!!!!」














ああ松田。
そんなにイヤならさっさとス●ッフサービスに電話しろ。





























ちまっといちにちめ































「松田さん、そんなに叫んだら咽痛めますよ」



「そうですよ。あ、それより棚の上のケーキとってくれませんか?この身長じゃ届かなくて・・・」





竜崎は棚の上段のケーキを取ろうと四苦八苦していたが、自分では無理だと悟ったのか月の隣に腰をおろした。
すっかり縮んだ竜崎は服のサイズが合わないために裾を踏みまくっている。
現在ワタリが服を買いに行っているのでココには月、竜崎、松田の三人しか居ない。
ちなみに、前回まで一応いたらしい夜神父他一名は胃に穴があいたため緊急入院した。
合掌。





「はぁぁぁぁ・・・・・・・。月君だって見たときはパニック起こしてたじゃないか」




「だから言ったじゃないですか。もうどうでもいいんです」





それはある意味悟りを開いたともいえよう。
こんなことでダメージを受けていたのではこの先やっていけないだろうし。
それによくよく考えてみれば月にとってこの状況は非常に良い。
キラとしての月にとって唯一の妨げになるのがLこと竜崎の存在だ。
その当人がこの通り『ちまっこい』状態になっているのでは、捜査どころではないだろう。






「・・・・・・・って竜崎、どさくさに紛れて膝の上に乗るな」





気付けば竜崎が月の膝の上にちょこんと座っている。





「いいじゃないですか。それに月君が口の端吊り上げて笑っているので、どうかしたのかと思って」





腐っても鯛(用法間違い)
小さくなろうが竜崎は竜崎なのである。
いくら愛らしく首を傾けようが、月の膝の上に乗って向かい合わせに上目使いに話し掛けられようが元は竜崎。
・・・・・・ちょっと可愛いかもしれないが。






「・・・・・・・別にどうもしないよ」



「そうですか」



「・・・・・・・・・・」




「松田さん?」





先ほどから黙りこくっている松田は目がちょっと妖しい。
居心地悪そうにもぞもぞ動いているが、一体何がしたいのか。







「いやぁ、なんかビデオに収めたい光景だなぁ・・・・・と」





「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」







松田氏、求めているのは癒しなのか。
それともただのショ●コンか。
竜崎はこのとき絶対この人と二人きりで話をしないことを心に誓った。







「ビデオなら既に用意してございますが」




「「・・・・・・・・っ!」」





「ああ、ワタリ。おかえりなさい」





「はい、ただいま戻りました」






帽子を脱いで一礼する姿はどうみても紳士なのだが、この人の精神状態も異常な気がしてならない。
縮んだ竜崎を見ての開口一番。

『そんな格好では風邪を引きますよ』、と。

普通じゃ竜崎とはやっていけないのは分かるが、この人も相当大物だ。
気配も音もなく背後に忍び寄る妙技といい・・・・もう変な人ばっかりだ。
しかし紙袋を携えたワタリの片手には●ニーのハンディカムカメラが!




「ワタリ、ビデオはやめてください」



「おや、3時のおやつは要らないので?」




最強ワタリ。
あの竜崎がすんごいイヤそうな顔してるぞ。
竜崎と同じ目線にまで屈んだワタリと竜崎はそのまま一分ほどにらみ合っていたが。
















「・・・・・・・・・写真なら許可します」





「はい、ありがとうございます。では服を着替えましょうか」






ガサリ、と紙袋が音を立てた。
・・・・量が尋常じゃないような気がするのは目の錯覚だろうか。










太陽が沈む。
目に痛いほどの夕焼けは、綺麗だったけど。






「・・・・明日のことを考えるのがとてつもなくイヤだ」






明日は戻っているといいなと思いつつ、ちまっこい竜崎の生活一日目が終わった。