夏の終わり、だんだんと涼しくなってきているもののまだ日差しが眩しい。
夜が明けるのを見ながら、僕はコーヒーカップを傾けた。
ただ純粋に美しい空を見て、なぜだか泣きたくなった。




「月君」



「・・・・・・・」





世界は美しくなんか無い。
しかしそれ故に美しい・・・・とどこかで聞いたようなフレーズを頭の中で幾度も反芻する。
昨日までは理解できない言葉だったが、いまなら少しだけ分かるような気がする。
対成すもの。
さながらコインの裏と表のように全く違う属性のものが、二つで一つのように。









「月君、いい加減現実逃避はよしてください」




「・・・・・・・・・・・・・」






声が、近づいてくる。
あまり聞きなれない、真剣な声。









「ちゃんと聞こえてますか?月君」










ああ、聞こえない。
何も聞こえないとも。
そしてどう考えても140cmに満たない不健康そうな顔の竜崎に似たちまっこい生物なんて見えないさ!!
そう、見えない。何も見えない。
だから来るな、こっちに来るな!!








「縮んじゃったものは仕方ないじゃないですか」







子供特有のソプラノには似合わない淡々とした口調。
裾の長いシャツをずるずるとひきずりながら『ソレ』が近づいてくる。











「〜〜〜〜〜〜〜〜っ君は馬鹿かぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
















そう、天才となんとやらは紙一重。
僕のライバルは・・・・・・
退行していた。