赤い花が咲く。
血のように、真っ赤な花。












In rose






















むせ返るような花の香り。
強い芳香を放つその花はみずみずしく、触れるとしっとりとしていて指にも香りが移る。
この目でその色を見ることは叶わなかったが、きっと幻のように美しいのだろう。
家が一軒立ちそうなほど広い庭の中には様々な種類の薔薇が植えられているそうだ。





『貴方のために植えたんです』





瞼裏に、この目で最後に見たLの姿が浮かんだ。
断罪の手は、やさしく月の目を覆った。











    目

              隠

          し

                   鬼














『・・・・っ触れるな!!』




『美しく、気高い。まるで貴方のような花ですね』






薔薇の小さな棘を気にもかけず、指で薔薇を強く掴んだ。
腕に抱いた真っ白な薔薇を、慈しみながら。




薔薇の中で、薔薇を慈しむ。







『あっ、はぁ・・・・・んあっ・・・・・』




『私の、私だけの・・・・・っ』












イン・ローザ















耳元で響く、柔らかな声。
それはとても心地よく、不快でもあった。
矛盾する気持ちに気付くことなく、襲い来る眠気にゆっくりと瞼を閉じた。






『―――昔ゲルマン人は薔薇を生命の象徴と考えていた。死者の十字架から咲く血の色の薔薇は死を超え、廃跡からの再生を意味する』







声は届かない、それでも。







『まるで今の貴方のようですね、キラ』






















おぼつかない足取りで、ゆっくりと這うように歩む。
小さな棘で身を守る薔薇を踏まないように、見えない薔薇を消さないように。



頭がおかしくなりそうなほど強い香り。
でも薔薇は好き。






「L・・・・・・・・」






消え入りそうな声で呼んでも、いつだって彼は気付いてくれる。
冷たい機械の目は常に自分を見張っているから。



薔薇は好き。
だって彼の好きな花だから。








「薔薇の中で」は喜びの象徴。
そしてそれは「薔薇の下で」、秘密を意味する。










誰も知らない、たった二人の世界の中で――――――