「死神って案外ロマンチックな生き物なんだな」




外見に似合わず、目でそう付け加えるライトの目は少し楽しそうだった。
ミサとかいう女。
レムと言う名の死神。

状況は大きく変わった。
それでもまだ、こんな事を言っていられる辺りが普通とは違う所なんだろう。






「人間に恋をすると死ぬなんて・・・人から見れば、寂しくて死んでしまう兎と同じくらいロマンチックだよ」



『そうか?』





そしてそれ故に愚かだ。
思っていても、ライトは口に出さない。
でもオレにはなんとなく分かるから、別に構わない。






「報われない恋か、笑っちゃうね。でもそのお陰で僕は死神の目を得ることができたんだけどね」






咽を鳴らして笑うライトは、外見と性質を除いてしまえばそのまま死神になれてしまいそうだ。
ノートを拾って、時間がすぎれば過ぎるほど、ライトは人から離れていく。
もともと、ライトはオレ達に近い存在だったんだと思う。
悪魔のような人間というのはよく見るが、死神のような人間と言うのははじめて見た。
だからこそ、オレは退屈していないのだろう。
退屈で死にそうだったのはライトだけじゃない。
ライトは今このときの会話の最中にさえ、Lを出し抜く策を考えている。
抜け目ない、とは正にライトのためにあるような言葉である。
まるで天使のように微笑んで、腹の中には悪魔を飼っている。

目を伏せて、少しだけ眉間に皺を寄せる。
これはライトが本当のことを話す時の仕草。





「・・・・・・・あの死神も、随分危なかった気がするけどな」






憐れな少女の執着。


白い死神の執着。



危ないバランスの上にたった二人。
そしてその仲立ちとなったライト。
ライトがいなくなったら、バランスが崩れて壊れてしまいそうだった。








憐れな恋の果てに、消えるか?







最後まで見届けて忘れるか?







自ら、全てを壊すか?











そこまで考えて、それは自分にも当てはまることなのだと思いついて馬鹿らしくなった。


三つ、付足す。




黒い死神の執着。



断罪者の執着。



・・・・・人の形をした、死神の執着。







Lがキラに惹かれるように。


キラがLに惹かれるように。


流河がライトに惹かれるように。


ライトが流河に惹かれるように。





対なすものはお互いを求めた。





そして死神は人よりも自分に近いライトに興味を持ち、ライトを通してLと流河に興味を持った。
ただ、掟によって介さないだけで。


















『・・・・・人と魔物は友情を築くより、いっそ恋に落ちる方が簡単だと昔の人間が言ってたな』





「ああ、どこかで聞いたな」










崖の淵に立っていても見えないから気付かないだけで、本当はもう手遅れなのかもしれない。












「まあ、僕等の場合は安心だね」




『・・・・・・・・・ああ』















なんだか気持ち的に消化不良なのは、まだリンゴを食べていないからだろう。
無茶苦茶な理由で自身を納得させて、その日の会話は終了した。





・・・・・・・なんか変だ。