「夜神君、大変です」


「?どうした、世界が終わったような顔して」



捜査本部、ホテルでキラに関する対象の資料を捲るライトの手が止まった。
竜崎は机に山程つまれた書類を一枚一枚見ているはずだったが、なぜか世界の終わりを見たかのような顔色をしている。
いや、顔色が暗いのはもともとだが。
死神のリュークにすら負けていないと思う、多分。
精彩を欠いた顔で、咽の奥から搾り出すように竜崎は言った。

















「・・・・・・・・・お菓子のストックが切れました」


















その瞬間、ライトはこの先の事だとかを一切忘れて直接手を下してやろうか・・・とすら思った。
ぶっちゃけどうでも良かったのである。
そんな事をいかにも深刻そうにいわれて、一瞬身構えた自分が馬鹿みたいじゃないか。
ふつふつと怒りが沸いてきて、腹のあたりに黒いものが溜まり始める。






「・・・・・・・・それで?」






とりあえず何か言ってみる。
でなければ、今すぐ手元にある分厚いファイルで竜崎の脳天をかち割りかねなかったからだ。





「何か甘いもの下さい」



でないと今日はこれ以上働けません、
そんな阿呆なことを付足されても困る。




「・・・・・・生憎と甘いものはあまり好きじゃなくてね、持ってないよ」




こめかみの辺りが引きつるのを感じながら、ファイルを閉じた。
その答えに竜崎は不服そうだ。




「この際ココアでもいいんですが・・・さっき飲んでましたよね?」




「ああ、でもあれで最後だったんだ。もう全部飲んじゃったし・・・」





まだ口の中に甘ったるい感触が残っている。
砂糖を入れすぎたのがいけなかったようだ。



「・・・・・・・・・仕方ありませんね」




何処か鬼気迫る勢いの竜崎も、買いに行くのはめんどくさいと小さくため息をつく。
諦めたのか。
頭も良く回るし、それほどルックス面でも悪くはないのに、この甘味に関する異常なまでの執着心は何なのだ。





「夜神君、ちょっと」



「?」




手招きする竜崎の元へと歩み寄る・・・・・・後でそれを後悔することになるのだが。




































ぅちゅ



































「・・・・・んっ・・・・っぁ!?」




「甘い・・・・・ですね」











思考が止まって









「ごちそうさまでした」











また動き出す









「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!!」








殺す!!
今すぐ殺す!!!
いや待て、今此処で殺したら後々問題が・・・・!





怒りというか、殺意を必至に押し殺しているうちに竜崎は近くのコンビニへとでかけていた。
適切な処置だ、負傷したくないのなら。










『人間っておもしれ〜』


「お、覚えてろよ・・・・竜崎!!!」




使い古された悪役の捨て台詞と共に、ライトは好敵手への復讐を誓った。












・・・・・・・・ココアなんて飲むんじゃなかった。
にしても、普通舌まで入れるか?