「夜神君、大変です」
またか、またソレか。
「お菓子・・・・」
「はい、コレ」
竜崎が全て言い終わる前に、大量の菓子箱を机に放る。
ドサドサッとやけに大きな音を立てて、いくつかが机から落下した。
望みのものを与えてやったと言うのに、なぜか竜崎は不満そうだ。
それでも体が糖分を求めているらしく、しぶしぶといった風にお菓子の箱を開けはじめた。
とりあえず昨日のような行動に至ることを回避し、安堵のため息をつく。
休憩にコーヒーでも飲もうと、手を止めて簡易式のキッチンへと足を運んだ。
「・・・・・・・・・・気に入りませんね」
竜崎の不穏な呟きは、ライトには届かなかった。
程なくして、コーヒーの香ばしい匂いが辺りに立ち込める。
「竜崎も飲むか・・・・・・ぃ?」
尋ねた口調は語尾が少し妙だった。
ライトの視界に入ってきたのは部屋に散乱した菓子の残骸たちだった。
ライトの体中を嫌な汗が流れた。
「まさか・・・・・」
「全部無くなってしまいました」
そんな馬鹿な!?
とは思っても、確かに竜崎の口の周りにはチョコレートが付着している。
捨てた訳ではなさそうだ。
しかし今日買ってきた量と言えば・・・・・・
ポッ●ー 三種類ふた箱ずつ
キ●トカ●ト 期間限定品と通常のものをふた箱ずつ
ショコラクッ●ー 全六種類ひと箱ずつ
チョト● 三種類ふた箱ずつ
総カロリーは7280.5Kcal(実話)
ちなみにご飯一杯分のカロリーは約160Kcalくらいである。
ライトの脳内計算が間違っていなければ四捨五入して、ご飯一杯分のカロリーの約46倍を摂取していることになる。
更にいうならば、一般的な成人の一日の摂取カロリーは約2000Kcalだと言われている。
「・・・・・・竜崎、君本当に人間か?」
「見て分かりませんか?」
この薄っすい体の何処にその量が入るのかは死神の存在以上に謎である。
しかもコーヒー一杯炒れるのに十分もかかっていない。
「甘いもの、下さい」
・・・・・・・・・・・・今日も負けた。
よく考えてみれば口の中はコーヒー味でちっとも甘くないはずで、いちいちキスされる必要も無い気がする。