どろどろに溶けたアイスクリーム。
安っぽい木の棒を白い液体が伝う。
握っていた手はベトベトで、気持ち悪いけれどアイスバーを離す訳にも行かない。
ちょっとでも傾けようものなら液が一気に垂れてくる。
ゆっくり、ゆっくり舐めとって、ポタリと落ちる白いしみがフローリングの床に出来た。







「あまい・・・・」







甘ったるい香り、いっそ吐き気がするほどに。
指に零れたアイスが熱でとかされて、どろどろになって床の白い水溜りが大きくなっていく。






「貴方の血も甘いんでしょうか。ねえ、キラ」






簡素な部屋、ベッドと小さなテーブルが一つ。
部屋の隅に置かれたコードレスの小さな冷蔵庫。





ただそれだけ。
監獄のようなその空間。





部屋の真ん中に横たわる命を失った『モノ』の頬を優しく撫ぜて、唇を寄せた。
もう何も映さない瞳は、最後に何を見たのだろうか。






指を長い舌で舐めまわして、なくなったアイスクリームの味を最後まで楽しんだ。





最後まで。





まだ、終わらない。




どろどろに溶けたアイスクリーム。
形がなくなって、ただ甘いだけの液体になった。







「まだ終わってないんでしょう。ねえ、キラ、キラ」






幼子のようにただ名前だけを呼びつづけてぽろぽろと涙をこぼす。
まだ終わらない、終わりたくない、終わらせたくない。
終わらせたのは自分なのに、やりきれない気持ちが残る。
何がしたかったのだろう、何を望んだのだろう。






安っぽいアイスバーの棒に当りが出たら、貴方はもう一度笑ってくれるだろうか。








――――――――白い水溜りは広がっていく。