悲鳴すら上がらない。
滴る赤、それは血だったのだろうか。
一瞬だけ赤い風が吹いて、ただその姿を見つめている自分に吐き気がした。
美しく、鮮烈な色だったのだ。


あの赤を、欲した。





「ぁぁあ・・・あぁっ・・・・・・・」




消えてしまえばいい、全て。
その存在を汚す物全てをこの手で消してしまえばいい。
悲痛なその叫びさえも。




「ぐあぁ・・・・あ、あ、あ、あ・・・・・・」




白く美しい手が赤く染まっていく。
白から赤へ


鮮烈な光が赤く塗り替えられて『モト』の色が消えていく。
形らしい形も持たぬまま。
不完全で醜いその姿、完璧でないのなら作り変えればいい。
もう言葉を紡がぬ口は塞いで、大地を踏みしめられない足を切り落とし、救いを求める手を焼いた。






「完璧でなければ必要ない」





赤がこびりついた頬に、透明な雫が落ちる。
それを視界に捕らえた瞬間、心の奥底で囁いた、言葉。










『コンナモノハイラナイ』











アイスクリームを掬うよりも簡単。
少し大きめのフォークで、濡れて溶けた柔らかな眼球を掬い取る。
悲鳴は無い。
抵抗するための手足も無い。


ビチャ


耳障りな音がして視神経がずるりと這い出た。













「これで貴方は私の物だ・・・・・・」











どこか恍惚とした表情で、眼球の納まっていた場所に舌を這わせる。
透明な雫、赤い液体。
暖かなその体が、血を流しながら生きるその美しさ。







求めた物はここにある
狂った神を愛す、狂った人間のたどり着く先は瓦礫のエデン。