欲しかった。
ただ純粋に欲しかった。
本当に欲しいものは彼のココロだったけど、それは叶わなかったから半ば無理矢理身体を手に入れた。
正体?本質?犯罪者か、否か。
そんなことは関係ない。
ただ、欲しかっただけ。
だから、手に入れた。
「・・・・んっ・・・ぁ・・・・ぐっ・・・・・」
証明を落とした部屋のベッドで白い体が躍る。
不規則な呼吸に合わせて上下する胸に口付けて、うつ伏せの状態から少しだけ身体を起こさせる。
四つん這いになった足はガクガクと震えて、行き場の無い手はシーツをまさぐった。
「キモチイイですか?視覚が失われると、他の部分が敏感になりますからね」
「・・・・っるさ・・ぃ・・・・あぁっ・・・・!」
律動を少しでも止めようと、力の入らない腕で覆い被さる男の身体を制した。
自分は全裸で、相手は着衣のまま犯されるという屈辱。
視覚を奪われ、自らの身体を陵辱されるという屈辱。
いつだって余裕たっぷりで、感情の伴わない行為を繰り返す、まるで人形のように。
「・・・・・・・・細い首だ」
「っふ・・・・・ぁっ・・・・・・!」
流河はライトの首筋に唇を寄せて、ザラついた舌でゆっくりと肌を舐めた。
ぴちゃぴちゃと、わざと大きな音を立てて何度も舐める。
「っや・・・・・・めろ・・・っん・・・・りゅぅ・・・・ぁ!!!!」
まるでぬるま湯に浸かっているかのような快感に、あられもなく声をあげる自分を叱咤して流河の背中に爪を立てた。
服越しで、傷にもなっていないだろう。
それでも、そうする以外に抵抗を示す行動が出来なかった。
それに誘発されたかのように、流河はライトの首筋に歯を立てた。
ガリ、と強く歯を押し当てて強く噛むと、ライトの口から一層高い嬌声が上がった。
血が滲んで、じくじくと鈍い痛みを発する。
そんな行為にすら性的興奮を覚える。
いつしか口から出る言葉に抵抗が消え、喘ぎ声しか聞こえなくなった。
「・・・・・ああっん・・・・あぁ・・・・・・・っふぁ・・・・・」
「いいんですよ、もっと声を出しても」
ライトの顎に手をかけて、揺さぶりをかけるように耳元で囁いた。
嬌声に比例するように律動は強まり、激しさを増していく。
「あっ、あっ・・・・・・あっやぁ・・・・・・・」
目を覆う柔らかい布を剥ぎ取って、浅ましく腰を振る自分を見たら彼はどうなるだろうか?
ブラインドマンのように目隠しをして犯す。
コレは一種の儀式のようなものだった。
この行為をしている間、自分達に名前は無い。
縋るように、名を呼ぶことはあっても個を表す用途は果たさない。
キラでもなく、夜神月でもなく
Lでもなく、流河秀樹でもなく
お互い認識しているのは快楽を貪りあう相手ということ。
それで十分。
「月くんっ・・・・・・!!
「・・んっ・・・・・ああっ!!」
欲しかったから、手に入れた。
苦しげに喘ぐこの顔も、見えない目で虚空を見つめる、その仕草さえ今は自分のものだ。
「流河・・・・・・・っ」
口元に、妖艶な笑みを浮かべて笑う。
整わない呼吸を、無理矢理に整えて。
「もう一回・・・・・っ・・・・する・・・?」
欲しかったから手に入れた。
でも、誘ったのはあちらから。
いつもやり込められたような顔をして、最後に笑う。
手に入れた。
この言い方は不適切?
手に入れたのは、彼のほう。
彼はいつだって、無意識なふりをして小さな仕草で人の欲を誘発する。
正体?敵?邪魔な相手?
欲しかったから手に入れた、ただそれだけの事。
暗い暗い闇の底で、死神が笑った気がした。