茹だるような暑さの中、焼けたアスファルトの上で歩く人の群れを見ながらライトは木陰で涼んでいた。
近所の子供しか知らないような小さな公園で、ただぼーっとしている。
非常に楽ではあるが、暑い。
ここ最近脳の働きが活性化しすぎているせいか、たまに脳を休めると思考が止まる。
ずっと張り詰めた状態でいるのは良くない、と珍しくリュークが正論を言ったので本部を抜けてきたのだ。
・・・・・・無論誰にも内緒で。
流河が(恐ろしいことに例の座り方で)仮眠を取っている隙に携帯を置いて、悪く言えば逃走してきた。
『ライトー、林檎、林檎!!』
数日間缶詰状態、そのあいだリュークも林檎を食べていなかった。
禁断症状が出てきて正直ウザイので、スーパーで買った林檎を手渡した。
嬉々として林檎を食べるリューク、林檎はあっという間に死神の胃へと収まった。
その様は甘味を人類とは思えぬ速さで食べていく流河に似ていて少し気分が悪くなった。
そもそも全ての原因はアイツにある。
ああ、思い出すだけでイヤだ。
『・・・・・・・・ため息つくと幸せ逃げるぞ』
そんな事言われても、流河の幻想的なアートのように曲がりくねった性格をどうにかしてくれない限りはムリだ。
キラだと疑われるのは別にいい・・・・・・いやよくないが。
実際本人だから仕方の無いことだし。
そもそも今ライトを悩ませているのは、キラとかLとか、そういう問題ではない。
問題なのは、流河の異常過食とそれに伴うアレやコレな行為の数々である。(※前話、及び前々話参照)
(・・・・・・ああ、頭痛くなってきた)
ズズ、と音を立てて100%果汁の林檎ジュースを啜る。
無意識に入ってしまう力で紙パックが歪んだ。
『ライト、顔怖いぞ』
「リュークにだけは言われたくないね」
念のため小声で会話をしているが、辺りには子供の気配すらない。
現代っ子は外で遊ぶより、冷房の効いた室内でゲームをする方が好きなようだ。
「・・・・・・そろそろ戻るかな」
あんまり遅いと捜査とは関係なくストーカーと化した流河が、リムジンで町じゅうを探し回りかねない。
唇についた林檎ジュースの雫を軽く指で拭って、ジュースの紙パックをゴミ箱に投げた。
『ナイッシュー、ライト』
「当然」
『(面白くない・・・・)・・・・・・・・・あ!』
「?」
死神の指差す方向には何も無い。
ライトの背中越しに死神が笑った。
「リュ・・・」
べろんっ
『林檎だ♪』
「・・・・・・・・・・・・・」
江碧にして鳥逾々白く
山青くして花然えんと欲す
今春看々又過ぐ
何れの日か是れ帰年ならん・・・・・・・・
BY杜甫 「絶句」
嗚呼、今日も暑い。