3.ああ、どうか彼らに幸福を






神様なんて信じちゃいないから、祈るのは神ではなく彼らに。
祈りの言葉?祈りの形?
そんなものはいらない。
祈るなんて、そんな他力本願な事をらしくもなくする気になったのは。




「またな」



いつもの通りに、分かれ際に言う言葉を言う彼の目がとても切なげだったから。

夏休みが始まる。
どこか、そわそわして落ち付きが無い、彼ら。
それはありふれていたけれど、浮かれた様子は微塵も無くざわついた教室の中ではとても小さく見えた。
掻き消えてしまいそうな、そう・・・彼らはとても遠かった。




言うなれば自己満足。
こんなちっぽけな祈りが届いているかとか、そういうことは最初から考えの外にある。


せめてありふれた安らぎを。


ああ、どうか彼らに幸福を。



そう、祈った。








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