1.それはあまりにも呆気なく







それはあまりにも呆気なく、壊れた。
硝子よりももろい、さして力を入れずともほんの一言いうだけでいい。





『サヨナラ、もう会わないで』




酷い雨の日、冷たい雨に打たれながら言った。
薄笑いを浮かべて、嘲るようにすがる子供の手を振り払った。
驚愕のあまり声も出ない、目を見開いてじっとこちらを見ている。
その目はこう言っている。





『嘘だろう・・・?』





悪い冗談だと言って欲しい?
嘘ですよ、愛してますと言って欲しい?



それをいうのは簡単だ。

抱きしめて、優しく口付けてやればそれで終わりだ。
けれど、そんな夢は見せてやらない。




絶望一色に染まった色は、なんでこんなにも美しいんだろう。
脆く、儚いからこそ美しい。






『もう二度と、姿を見せないで』






小さな鳴咽が雨音に消えた。
ほら、雨に濡れたアナタはこんなにも綺麗。











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