3.辛いのは。

テスト期間中とか、相手がいそがしいときとか、会えないのは仕方が無い事だと思う。
本当は毎日毎日会いたいし、話したい。
それが出来なくて辛いのは多分自分だけじゃないからと思っていたから耐えられた。

なのに、それが自由にできるこの状況下で何にもしてこないっていうのはどういうことなんだろうか?


浦原商店で、二人きりになって黙り込むのは別に珍しいことではないのにこの沈黙がいやに辛い。
だって、来てからほとんど会話もしてないしいつもみたいに触れてくることも無かったから。
浦原は縁側に寝転がってぼーっとしている。
寝ていないのは分かってるから妙に居心地が悪い。
俺はといえば浦原から少し離れたところで梁に背をあずけて同じようにぼーっとしていた。
けれど内心はとても焦っていた。
いつもと違う雰囲気、落着かない。

ああ、もう帰っちゃおうかとすら思う。
誰も居ないのに・・・何もしてこないし。
自分からは話し掛けづらいし、かといってイキナリ『帰る』と切り出すのもなんだか・・・。

辛いのは、かまってほしいのにそれを言えない事。
それを我慢しようとしてしまう事。


一言、それでいいのに。



「・・・・・・なぁ」



声に振り向いた浦原は、笑っていた。
一瞬その顔に見惚れてしまって次の言葉は喉元で止まってしまった。



「ぁ・・・・・・・・」


「黒崎さん」



呼ぶ声が優しい事に安堵して、伸びてくる腕に従った。


この手のあたたかささえあれば、ほんのちょっとの辛さなんてどうでもいいと思う自分はもしかしなくても馬鹿でしょうか?





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