1.冗談に聞こえるように







冗談に聞こえるように、わざとおどけていった。



「ね、しません?」


抱きしめた体が少し強張って、息を詰めたのが分かった。
後ろから抱きしめているから表情が見えないのがもったいない。



「・・・・・・〜ッ、お前は・・・っ」



俯いているせいで赤く染まったうなじが目の前に晒される。
この分だと顔も真っ赤だろう。
こんな言葉一つでこんなに可愛くなってくれるんだから、たまらない。



「なんですか?」



主語もなにもない短い言葉なのに、ぴったりとくっ付いたこの状況から連想されるのは一つだけで。
それを嫌がってたら肘鉄の一つや二つはお見舞いしてくれるだろうから、こうして腕の中に大人しく収まってくれているのはしてもいいってことなのだろうか?
早く返事をしてくれないと、自分の都合のいいようにとってしまうからね?

大人ってずるいから、冗談みたいに本音をいえるんだ。


「大好きですよ・・・」








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