ぬるま湯の中に頭から顔を突っ込んでいる感じ。
息苦しくて、けれど心地よい。
母親の腹の中ってこんな感じだったんだろうか。
居心地よくて、くすぐったい。
短い髪をわしゃわしゃと撫ぜられるのは、子供にするみたいで嫌だったけれど。
この手が大好きだから、文句を言おうにも言えないのだ。



「嫌ですか?」




そうだと肯定したら止めてしまうだろうか。
気を抜いたら閉じてしまいそうな瞼を必死に開いて、僅かに首を傾けた。


そのままスーッ、と倒れこむ。
ヒトコマヒトコマ、自分にとってはゆっくり過ぎる時間は一秒にも満たない。
けれど硬い床の感触はしない。
自分を抱きとめる優しい腕。




「しらない」



ちゃんと答えてしまったら、このままの状態ではいられないだろうから。
俺はいつもこう答える。