朝が来るのは未だに好きになれない、起きるのが億劫なのにそうしなければ彼は眠ったままの自分を放ってさっさと帰ってしまうから。
朝が来るからいってしまうのだと、思ったら好きどころか大嫌いになった。
耳につく鳥の声を、いっそ憎いと思う。
布に移った仄かな体温は心地よく、とても離れがたい。
小さく唸り声を上げながら寝返りを打つと、そのまま布団からはみ出した。
頭が畳にゴツンとぶつかった・・・・ほんのちょっとだけ痛い。
「何やってんだよ」
どんなに眠くても、彼の声だけはハッキリと脳まで届く。
上下さかさまのままで、見上げた。
「おはようございます」
朝起きたら『おはよう』夜眠る時には『おやすみ』。
そんな当たり前すぎる挨拶を何でしないのかと随分前に問われてからは、毎日欠かすことなく言うようになった。
言われてから返すのではなく、自分から。
同じように、彼もおはようと返した。
「で、なにしてんの」
「何してるんデショ?」
「・・・・・アホか」
寝ぼけてるとか、そう言う風に考えてはくれないのだろうか。
無情にも彼は障子戸を開けてスタスタと去ってしまおうとするので、咄嗟に足首を掴んで引き止めてしまった。
あまりにも唐突だったので、勢い欲前につんのめった彼はそのまま畳の上に倒れこんだ。
ああ、ちゃんと方膝をついて一応受身は取っていたけれども。
ドン、と鈍めの音。
おお、声は出さないか。
えらいぞ、オトコノコ。
「・・・・・・浦原」
「アハ、ごめんなさい」
ふざけていったらゲンコツが降ってきた、これは結構痛い。
「いたいなー、ちゃんと謝ったじゃないッスか」
「ふざけんなっつの、俺は腹減ったから朝飯食いに行くの。離せ」
お互い寝そべったまま、なにやってるんだろうね。
開けられた戸から朝食のいい匂いがする。
確かにお腹がすいたかもしれない。
でも一番したいのは彼に、黒崎さんに引っ付いてベタベタすることなんだけどね。
人間欲望にスナオに生きるべき、というわけで行かせてあげないという結論に達する。
「って、オイ!!」
思い立ったらすぐさま行動。
抵抗される前に首に手を回して腕に抱きこんだ。
子供って体温高い。
あーだこーだ耳元で喚かれても眠いんだから、そんなの外で鳴いてる小鳥の声みたいなものだ。
ああ、鳥の声なんかとは一緒にしたくないほど愛しいけれど。
朝が嫌い、君が好き。
もう少し静かにしていていてくれたら、情緒も出るものだと思うケド。
まあ、いいや。