空から降る、この美しい花の名前を知りたかった。
しんしんと降る、雪が積もる。
心にも、積もって。


ひゅうひゅうと細く鳴る風の音が耳に心地よい。
窓をカタカタと揺らして、強い風は冬の空を自由自在に舞い踊っていた。
時々それに混じる雪を見る。

宙を待っている間はあんなにも綺麗なのに、つもり積もると煩わしく感じられるのは何故だろう。
雪がただ綺麗なものではなく、この極寒の大地に住まうものとしては様々な害をもたらすとすでに知ってしまっているからだろうか。
雪道を歩くのは酷く疲れるし、面倒。
日によっては外に出ることもままならないことも。(ドアの前を雪でふさがれて、家から出られないといった現象も特別珍しいということではなかった)
そんな日に限って、皆で遊ぶ約束をしているものだから機嫌は当然悪くなる。
窓際でぼんやりと思いを馳せながら外を見た。荒れ狂う空を、美しいと思う。



『ああそうだ、雪色だな』



そういった声が脳内で何度もエコーした。
淡い雪色、薄青い影の映る雪に似ているという。

私は無粋に触れてくる手を振り払うことも忘れて、その言葉に聞き入った。



『オレは雪が大嫌いだが、お前の髪は好きだ。綺麗な雪色』



貴方は、そういっていつも髪に触れたがった。
自分もそれを嫌だと思わなかったから、好きなようにさせていた。
暖かい他人の温度が触れてくることに安心できるからだろうか、うれしくて。



何でこんな日に限って今日は嵐なのだろう。
会いたいと思うときに限って会えないのだろう。


今すぐ、彼に触れて欲しかった。