ああ、なんて寂しいヒトだろう。
一目見て分かるほど、他とは違う温度のヒト。
あーあ、かわいそう。

第一印象なんて、そんなものだった。



集団の中で生活する以上、孤立してしまうというのは最悪の事態だ。
そんなこと、子供にだって分かるのにアイツはどうやらよく理解できてないみたいだった。
理解以前に、そうなっていることにも気づいていないのかもしれないけど。

広い教団の中で、訓練のために移動する今日団員の群れに外れて一人ぼっちでくるくると同じ場所を回っていたり。
もう夜も更けて誰もいない図書室で、一人寂しく積み上げた本を読んでいたり。
私が見かけるとき、アイツはいつも一人だったように思える。
そうでないときのほうがきっと多かったんだろうけど、印象に残っているのはいつも一人きりのアイツだった。
奇抜すぎる個を少しだけでも抑えて適当に輪の中に混ざってしまえばいいのに、不器用なやつ。
私はその日も教団の食堂で、適当に捕まえた比較的年の近い教団員と昼食をとっていた。
この閉鎖空間の中で話題にたいした変化なんて無くて、適当に相槌を打って笑ってさえいればよかった。
スプーンでスープをかき混ぜながら、私は視線をチラリと壁際へ寄せた。
その場所だけが別の空間のように、一人。
いつもと同じように、アイツは少しだけ俯きながらごはんを食べていた。
雑音だらけの食堂の中で、アイツの周りだけが静かだった。
ああ、かわいそうなヒト。

なんだかそう思うのにもいい加減飽きてきた。
あきちゃった。








今日の昼食はえびピラフとサラダ。
トレーにそれと飲み物を載せて、私はアイツの定位置へ近づいていく。



「ねえ、ごはん一緒に食べない?」


「・・・・・え?」


六神将のくせに、私の気配にも気づかなかったんだろうか。
私が声をかけてようやくその存在に気づきました、っていうような動作でディストは顔を上げた。
伸ばした前髪と眼鏡で表情はあんまりよく見えなかった。
いすに座ってるから、立っている私より視線が低い。
自然、見上げられている形になるんだけどなんだかそれがおかしかった。
ディストがそのままピクリとも動かないから、私は返事を待たずに勝手に隣に座ることにした。


「いただきます」


私はそういって、ディストの隣で勝手にごはんを食べ始めた。
少々えびをけちり気味なピラフは、それでもおいしい。

私がピラフを半分ほど平らげたころになって、ようやくディスト自分の食事にも手を出し始める。
小さく『いただきます』と呟いた声は、ちょっとだけ震えてた。
言い慣れないような言い方が、とても耳に残った。

一人でごはんを食べるときは『いただきます』も、『ごちそうさま』も、きっと寂しく消えていく言葉なんだろう。
かわいそうなひと。
そう思うのはいい加減あきて、あきて、あきてしまったけれど、その印象はまだ消えないままだった。

最後まで、消えないままだった。