必ず帰ってくる。


必ず帰ってくる、と。
彼は笑った。
その笑顔が、今でも心にこびりついていて、消えない。




グランコクマの空は、夜になると大気が澄んで夜空がよく見える。
空を見上げると星と譜石帯、そしてその向こうに音譜帯が見える。
あれから何度、こうして空を見上げただろう。
音素になってしまった彼は、今どの辺りにいるのだろうか。

「……ルーク」

帰ってくると言った言葉は、きっと現実にはならなくて。
彼はあの空の彼方から帰ってこない。
記憶さえ、その空に散らばって今は何も見えない。
記憶を持っているのは、自分。
たとえ彼が戻ってきたとしても、それは「彼」の記憶を持つ別の誰か。
もう、ルークは……自分の中にしかいないのだ。

「私は……待っていますよ」

それでも。
自分は。

「愛しています」

ジェイドは息を吐くと、目を閉じて空の音素の流れから視界を閉ざした。