掴もうとすればするほど、すり抜ける。





いつの間にか結構な量になってしまった書類に思わず目を背けたくなるのを堪えて、ジェイドはその膨大な紙の山に向かい合った。
硬い字体で綴られている文字に目を通す、報告のみ、必要なことだけを最低限の言葉で。当たり前のことだ。


(ああ、そういえばあの子の文章は、いつも、必要の無いことも)


確認を終えて積み上げられた書類、何でもかんでも彼に結び付けてしまう自分の頭はかなり重症なのだろう。
無意識のうちに脳裏にちらつく子供の影を(はやく逃げて下さい)(とも言えずに)否定することもできず、(とんだ妄想だ)口元を押さえる。
笑いたくすらなった。

私が、その手を捕まえてしまう前に。(勘違いを起こす前に、どうか)