たらたらと流れる赤い液が視界に入った瞬間、喉が引きつるような飢えを訴えた。
本能的に芽生えたこの感情を抑えるためには、無駄な労力が要る。
なんとも面倒な事だ。

「あ、やば。血ぃでた」

この、子供は・・・本当に。

「・・・貴方は、本当に警戒心というものがありませんね」

「ん?なにが?」

まんまるで、キラキラとした目を向けられて思わずため息が出た。
腕から流れる傷口を押さえて、指に付いた血を舐めているルークには警戒心などカケラもない。もともとそういったものが備わっていないのか、鈍感なのか。

「かしなさい」

薄く血を刷いたルークの指を取って、口に含む。
この程度で済むのだから、感謝して欲しいくらいだ。
くちゅ、と唾液に濡らして舐め取った血液は極上の味。
残さないように、指の股まで舌を這わせて味を堪能する。

「っ、や・・・くすぐった!」

「・・・、はい。終わりです」

本当は傷口まで舌を這わせて、その体を流れる血液を啜りたかった。
けれどそれを何とか押しとどめて、手を離した。

「ん、ありがとう」

「どういたしまして・・・」

ああほんとうに、たかだか人間に心を狂わせるなんてどうかしている。
頭から食べてしまいたいのに、いとおしすぎてそれが出来ないなんて。

狂ってる、のかもしれない。