じっと、左の手を見た。
最後にあの男に触れた場所だ。
彼はなぜ、左側の手を差し出してきたのか。
あいさつは右の手で、と昔習った気がするのに。


背後を振り返ると、みんなの背中が見えた。
とおざかっていく。
俺を置いて遠くなっていく。
自分で選んだ結果だというのに、悲しくなるのが少し笑えた。

「ありがとう、みんな」

両手で剣の柄を握るその前に、もう一度だけ左の手を見た。
これで最後だと、ずっと覚えておこうと思っていたのに、もうあの男のぬくもりはかけらも見当たらなかった。

剣を振り上げる。

これで、最後だ。


「ありがとう、……ジェイド、」