あなたがいないせかいが、どれほどにくるしいものか。
あなたにはそんなもの、わからなかったでしょうね。
あさおきて、あなたがいないとじかくして。
しょくじをするにも、あじがわからなくて。
よるねるときは、あたたかさがないのです。
それでもいつかかえってくるんじゃないかと。
ずっとずっとまっていました。
けれどもう、からだがうごかないのです。
まちつづけたからだは、もう、なにもかんじられなくなりました。

めも。
みみも。
はなも。
くちも。

もうなにも、わからなくなりました。
あるとすれば、あなたにあいたいと。
そんなきもちだけなのです。

瓦礫と野原の真ん中で赤毛が笑う。
手を取り歩きたいと、腕を伸ばした。


それはまるで夢のようでした。