少し不器用な手つきで野菜を炒めていく様をまじまじと見る。
不器用だとは言ってもそれはちゃんと料理を知っているものの
動きをしていてただ単に慣れない場所で戸惑っているだけだった。

此処は自分の家。
そこで料理をしているのは学校の生徒。
何でこんな状況になったのかというと、彼がいきなり保健室に来て
「今日俺が晩飯作りに行くな!」
と言い出した事がきっかけだった。その時には何事かと思ったものだが、
実際作っている風景を見てて悪くは無いと思ってみる。
白黒の世界に色がついたみたいに。殺風景な部屋が明るくなった。

「この間アッシュにオムライスの作り方教えてもらったんだ!だからとりあえず野菜炒めとオムライスな!」

「微妙な献立ですねぇ」

「しょうがねぇだろ、アッシュが中々作らせてくんねーんだから」

ぶーぶーと文句を言いながら野菜炒めを作り終えて皿に盛り付けていく。
双子の兄の相変らずな保護者っぷりにはいはいと軽い返事を返しながら
良い匂いのする野菜炒めをテーブルへと運んだ。

「えーと…これはこうで…」

ぶつぶつと呟きながら次の過程に取り組む彼は常に笑顔で、
それにつられて自然と此方も微笑む。
懐かしい感覚。まだ、妹と暮らしていた時のようだ。

「ルーク」

「どうした?」

「失敗しないで下さいよ」

「煩ぇっつーの!見てろよ、そんな減らず口叩けなくしてやる!」

奮闘する背中を見つめながら、笑みを崩さず瞳を閉じた。