真っ白いドレスを着た、笑顔の花嫁と。
同じく白のタキシードを着た花婿が。
幸せそうに口付ける。
素敵ね、そうだね、なんて声がする。
ああ、羨ましいなどと言葉を出すことも出来ない。
誰も彼もが祝福するような恋など、自分には無理で。
今している恋は、逆に誰にも言えないようなものだ。
言ったら全て崩れてなくなってしまう。
馬鹿みたいな気持ち。
無くなってくれなかった、失くしたかったのに。

ふと。

頭上に飛んできたものを、条件反射で掴んだ。
花束。
黄色の花をあしらったその小さなブーケは、花嫁が飛ばしたものだろう。
わっと涌いた歓声と、女性達の羨む声。
通りすがりの自分が貰ってもいいものかと困り悩んでいると。
花嫁の透き通った声が届いた。
あなたにも、幸せを。
醜い心もあったものだ。
なら少しくらい、少しだけでいいから、あの人の心を俺に下さい。
あなたたちの幸せを、少しでいいですわけて下さい。
胸が痛いのです、軋んで軋んで大丈夫だった頃のようにならないのです。
叫び出しそうになって、ブーケに顔を埋めた。
あの人の髪のような色の綺麗な花は。
鮮やかな匂いを運ぶ。
苦しくなるばかりの心は、幸せにもなれずに花を枯らすばかりだった。