ぎらぎら輝く空の光に、いっそ殺意さえ覚えた。
寒いのはキライだが、暑いのはもっとキライだった。
あつい、そう言葉にするたびになぜだか不思議と体感温度まで上がったような気になるのだ。
だから、なるべく言わないようにしていたのに。

「今日は本当に暑いですね」

なんて、ちっともあつくなさそうに言うもんだから。

「…嘘つき。ぜんぜんあつくなんてないくせに」

窓を全開に開け放った宿の部屋には、時折風も吹き込んでくるけれど、その程度では慰めにもならない。
そのくらい、あついのに。

「誰が温度を感じない冷血ニンゲンですって?」

「そこまで言ってない、ヒガイモーソー」

洗濯されたばかりのシーツに身を横たえて、ごろごろ。
生ぬるい風なら、いっそ何もいらないのに。
ああもう、ほんとにあつい。

「あああああ、っとに、もう!あつ、い!」

砂漠を歩くことに比べたら、なんでもないのに。
どうしてこんなにあついのか。
耐えかねて、ふるふると頭を振ればジェイドが笑う気配がした。

「だったら、離れたらいいでしょう?」

そもそもここはツインルームのはずで、わざわざ男二人が同じベッドにいる必要はないのですから。
そう、付け足してジェイドは眼鏡のブリッジを指で押さえた。
その仕草がいつもよりぎこちないのは、オレが利き腕を封じているからだ。
手袋を取り払った手のひらの温度は、やはり、あつくて。

「やだ」

でも、放す気にはなれなかった。
どこか遠くで、ウィンドチャイムの響く音がする。
気分だけなら、ほんの少しばかり涼めるけれど。
こんなあつさは、季節なんか関係なしに隣にあるのだから。

「やだ、離さない」

こんな熱になら、浮かされたってかまわない。

「今日のルークは小さな子供みたいですね」

「…どうせ七歳児だよ」

それでもいいさ。
隣にジェイドがいて、こんなオレの我侭を聞いてくれるんだったら。

それでもやっぱりおかしそうに笑うジェイドに腹がたって、オレはそっぽをむいてささやかな抵抗を示した。


もちろん全く、繋いだ熱の前では何もかもが無意味だったけれど。