砂塵の大地





季節は冬だというのに、この砂漠はなんら変わりなく、普遍であり続けている。
照り続ける太陽の温度は確かに夏に比べたらマシだろうが、あくまでもその程度だ。
乾いた風と、肌を焼く光、いつだって喉は渇きっぱなしで、砂塵はもはや視覚に同一化しているかのよう。

その乾いた土地の小さなオアシスを抱く村に、男がやってきた。
数年前にふらりと現れた男に、村人達は口をそろえて言った。
なぜ、こんな場所に?
男は旅人だった。
砂よけ、あるいは陽よけのマントのフードを目深にかぶった男の表情は、どうにも分かりづらい。
影を背負ったような空気を纏うその男を、けれど村人達は拒絶できない。
この過酷な大地で暮らしていくからには、旅人という客なくして明日を繋いでいくことができない。
いぶかしみながらも宿屋の主人はその日の寝床を提供し、男は芯の通った声で、けれど小さく礼をする。

その際にふとのぞいたフードの下の両の目は、赤く。
夕暮れ時の、砂漠の地平線を思わせた。
どこかで見たようなその光景に、宿の主人は首をかしげた。

今日という、この日も。
なんら変わりない。
世界の誰かにとってはそうで、世界の誰かにとってはそうでない。
けれど、そんなことに何の意味がある。
そんな些細な疑問など、すぐに消えうせてしまうのに。