たった一ヶ月が、こんなにも長いとは思わなかった。


久々の感覚に、気が狂いそうになる。
おずおずと手を伸ばして、触れたと思った瞬間には理性がとんでいた。
抱きしめた体の温かさを求めていたのだと、今更ながらに分かって情けない気持ちになる。
こんな気持ちは生まれて初めてかもしれない。
寂しいと思ったことも、誰かをこんなに愛したことも初めて。
少なくとも彼と会う前の自分は、もっと理性的だったはずだ。
けれど、悪くはないと思う自分がいた。






「はあ・・・んぅ・・・」

「・・・っ、ルーク」

キスをする時間すら惜しくて、熱を持った唇をむさぼりながらルークの体をまさぐる。
跳ねる吐息ももどかしいくらいで、行為は先へ先へと急くばかりだ。


「っ・・・ァ、あぁ・・・」

やがてキスは唇を離れて首筋を這う。
この一ヶ月、襟首からのぞくあの首筋に焦がれていた。
そこを今、夢中になって舐めたり吸い付いたりする。
いつも頭の隅においている理性という名のストッパーはとっくの昔に壊れてしまっていた。
耳に届く喘ぎ声、息遣いに劣情を途方もなく煽られていくのを感じながらただ行為に没頭した。
欲求不満、なんて言葉は自分から程遠いものだと思い込んでいたがそれはどうも思い違いだったようだ。
自分が服を脱ぐのすらもどかしく感じて、一方的にボタンを外していく。
何度も口付けている間に、少しずつだが余裕が戻ってくる。
十代のガキじゃあるまいし、いい年してがっついているのもみっともない。
体だけはちょうどその年齢に達しているルークは、性急に嬲られて呼吸もうまくできていない。
自分の腕の中で、とろけた表情をして荒く息をついている。
初々しい反応も、反するように触れただけで過敏に反応する体も一ヶ月前となんら変わりない。


「・・・痕、さすがに消えてしまいましたね」


ルークに、自分が誰のものであるかを分からせるために行為のたびに施していた所有印も、噛み跡もとっくになくなっている。
血がにじむほどきつく歯を立てて、消えないようにとつけた傷すら無い。
傷すら治る。一ヶ月は、短いようでいて長いのだ。


「ぅ、ん・・・っだって・・・」


「安心してください・・・今日からまた残してあげますから」


「ッ・・・!」


ちゅ、とキスで目星を付けた場所に、歯を立てる。
噛みつかれると分かっていて逃げるそぶりすら見せないルークも、こうされる事を望んでいる筈だ。
つきたてた犬歯は薄く皮膚を食い破る、痛いということを知っているのにルークは抵抗しない。


「・・ぃ、あ・・・・!」


にじんだ血を、舌で舐めとる。
それすらも快感に変わるようで、ルークは身を震わせた。
きつく吸って鬱血した跡も、噛み跡も2、3日では消えない。
痕がついていれば、ルークは自分のものだということが確認できて安心なのだろう。
傲慢な自分の欲は、とどまるところを知らない。



「・・・消えないように、いっぱいつけてあげますよ」


「馬鹿・・・ア、やっ」


「・・・噛んだだけなのに、こんなにして・・・ルークは淫乱ですね」


熱く猛る半身をぐい、と手で押すとルークは嬌声を上げながら背をしならせた。
直接触らなくても、ルークの下半身は濡れそぼっていた。
ズボンを剥ぎ取って直接触れれば、それだけでルークはイった。
誘い込まれるようにルークの片足を肩に乗せて、股間に顔をうずめる。


「あ、ぁぁっ・・・!」


一度開放された欲望を根元から先端に向けて一気に舐め上げると、ただでさえとろとろの先端から、また粘っこい液体があふれ出す。
それが少しでもあふれるのが惜しくて大きく口を開けると、すっぽりと性器を口にくわえた。
じゅぶり、じゅぶりとわざと大きな音を立てて舐る。


「あ、あ・・・ひァ、あ・・・ッ」


のどの奥までくわえ込み、固く芯を持った性器に私はは舌を絡める。
反射的に体をを押しのけようとしていたルークの手はいつしか私のの頭を抱え込み、立てた膝は私を挟むように力を込めてきていた。
ルーク腰がぶるぶると震えている。
若い体は、息つくまもなく次の快楽を求めていた。


「ジェイ、ド・・・っ!」


「っ、分かってますよ・・・」


ちゅくん、と自分の唾液をたっぷりふくませた指先で、尻のカーブに沿って見つけ出した後蕾をいじりだす。
中指を第一関節くらいもぐりこませて、軽く抜き差しするだけでルークは喘いだ。
さすがに一ヶ月もシていないと、中も狭くなっている。
異物を押し出そうと内壁が指を締め付けてきた。
しっかりと慣らすために時間をかけて愛撫してやるが、ルークの声が行為を急かす。


「はやくっ・・・ね、ぇ・・・」


「あんまり煽るとっ、後で泣きを見ますよ?ほら・・・息を、吸って・・・」


「はぁー・・・あ、ふぅ、・・・っ」


「そう・・・上手ですよ・・・呼吸の仕方をしっかり思い出すんです」


拒まずに受け入れるために、ルークは肩で大きく息をする。
すると指をくわえ込んでいる内壁は、やがて押し出そうとする動きから、誘い込むような動きへと変わった。



「―――もう、欲しいですか?」


聞けば、涙でぐしゃぐしゃな顔のままルークは何度も頷いた。


「じゃあ、イキますか」


「ふあぁぁ…ッ」


ずるりと指を引き抜くと体を起こし、ルークの髪にキスをした。
指を失った後蕾が切なげにヒクついている。
そそり立った性器の先端をルークの後蕾に押し付ければ、待ち望んでいたといわんばかりに肉壁がうごめく。


「っ、あ、んんんぅ・・・っ!」

「―――っ」


そのまま、一呼吸もつかずに腰を進める。
そのまま根元まで、さっき指でいじっていたより奥の場所に、到達した。
―――腰から先が、とけるかと思うくらいに気持ちいい。


「熱いですよ、ルークの中・・・」


「はぁー・・・は、ぁ」


ねっとりと包まれる粘膜が気持ちよくて、私は腰を押し付けたまま堪能するように深くため息をついた。
汗で髪が頬に張り付く感触も、随分久しぶりだ。


「――今晩は何回イけるでしょうね?」




腰を突き上げながら、久々の感覚に思わず笑みが浮かんだ。
悲鳴を飲み込んだルークの潤んだ視線は、むしろ心地よいくらいだった。





「もう離しませんよ、ルーク」