黄色い陽射しの朝はこんなにも明るくて






その、鬱陶しいほどの愛でもってつながっているのだとばかり思っていた。
妄信的といっていいほどの、しかし疑い様もないその姿は途切れないものだと思っていた。
名前負けしないくらい、それはそれは幸せそうに笑うものだから、そうなのだとばかり。
だからこそ惹かれたのかもしれない。
作り物ではない笑顔で笑うけれど、ひどく寂しそうな声で言うのだ。


「あの方はとてもお優しいから、きっと俺の醜さには一生気づかれぬのだろうな」


すぐに消えたけれど、その泣き笑いのような表情は日常のそれとあまりにもかけ離れていたので俺は思わず言葉を失った。踏み入っていいものかとためらう。らしくないのはどちらだろう。


「もったいないほどに、沢山のものを貰っているのに、それだけで身に余るというのに、まだほしいのだ。言葉がほしいわけではない、心も、もっと即物的なものでもなくて、この思いの行き場がほしいのだ」


その告白は赤裸々というほどのものではなく、けれど耳を塞ぎたくなる。

身に覚えのある感情だった。
もう十分すぎると、そう思う半面でもっと深みにはまっていく。
もっと欲しい、思いを返して欲しいと。


「愛されているとは思う。ああ、うぬぼれだと笑ってくれてもかまわぬよ。そなたなら分かってくれよう。俺が欲しいそれと、あの方が下さるものとは種類が違うことも」


なにもかも。
ああ、分かるさ。
それこそ手に取るように。


「苦しく、ないか?」


分かってる、分かりきってる。


「苦しくて、つらい」


それはこちらのほうだ、とは言えなかった。
分かるから、こそ。

「けれど、幸せなのも嘘ではないのだ。本当に」


幸せだった、あのころを今思い出す。
あの時思っていたのは誰だった?
綺麗に笑う、あの人が好きだった。
俺以外の男に恋してるあの人の横顔が好きだった。


「嘘じゃ、ない」


言い聞かせるような声には聞こえないフリをした。
今も昔も、他の誰かを好きなきみの横顔に恋してる。
黄色い陽射しの朝はこんなにも明るくて、けれどちっとも暖かくはないのだ。